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会長からのメッセージ(2)
開かれた山林会への第一歩
 時の経つのは早いもので、開かれた山林会を目指すという高らかな宣言をしてから半年以上が過ぎました。昨年は、わが国は、東日本大震災と原発事故に見舞われ、何をするにも、何を言うにも、重苦しい一年でした。この正月から、この三会堂ビルに復興庁の方々が陣取り、臨戦態勢を新たにしつつあるので、待ちに待った復興の春がやっと訪れつつあるようにも感じています。
 さて、当会も、昨年、機関誌『山林』の8月号(1527号)から12月号(1531号)にかけて、多くの方々のご協力を得て、「国際森林年―震災復興に林業・木材産業はいかに貢献できるか」というテーマで特集を組みました。その内容をまとめて、新春早々この1月に、農林水産叢書として(農林水産奨励会発行)刊行いたしました。その中で、これからの地域づくり・森づくりに関して、多くの専門家の方々が多様な提案をされております。その一人である眞下正樹氏は、減災の観点に立って、「街中里山→緑の津波避難回廊」という「津波減衰のための緩衝施設」ともなり、かつ「避難アプローチ施設」ともなる斬新な土地利用法を提案されています。これは、これまで街の外側にあった里山を、大胆に街の中に誘導し、津波のエネルギーを減衰させると共に、人々の逃げ道を用意しようというもので、里山の「複眼的利用」を考えたものです。同時に、その際に、日本古来の「輪中」や「信玄堤」の知恵を生かすことがもう一つのポイントになっており、まことに時宜を得た提案です。
 ところで、この1月21日で、本会は130周年を迎えました。それを記念して、1月30日に、「森林の世界に出かけよう―森林教育のさらなる発展を目指して」というテーマでシンポジウムを開催いたしました。お陰様で、三会堂ビル石垣ホールに180人あまりの多くの方々のご参加をいただき、雨谷麻世さんのミニコンサートから始まって、小林富士雄名誉会長の基調講演、4人のなでしこパネリスト:井上真理子、長澤典子、藤野珠枝、吉村妙子の各氏(コーディネータ:宮林茂幸東京農大教授)によるパネルデスカッションと進み、シンポジウムは成功裡に終わりました(写真参照)。特に、参加者の半数近くが一般の方々(中でも女性の方々)であったことは、「開かれた山林会」を目指すという私の所信表明に少しは沿ったものになったのではないかと自負しているところです。その概要は、後日、機関誌『山林』に紹介する予定です。なお、当日、各参加者に、昨年の5月に出版した『小学校高学年のための教本―日本の森林と林業』を無料で配布いたしましたが、この方も刊行した7,000部のほとんどに引き合いがあり(さらに6,000部増刷の予定)、今のところ現場の小学校で大変好評です。著者及び編集者の熱い思いが子どもたちや現場の先生方に伝わったのかも知れません。これも、開かれた山林会のイメージアップに一役買っているようです。まずは、この場を借りて、シンポジウムにご協力を頂いた方々及び協賛、ご支援を頂いた諸兄に衷心から御礼申し上げます。
 次に、「開かれた」というキャッチフレーズ、『山林』誌年頭所感(本年1月号)の繰り返しになりますが、東日本大震災、原発事故に関して一言のべておきたいことがあります。「しっぽが犬を振る」という表現をご存じでしょうか。これは、本体よりも部分が重要な場合があるということの比喩的表現ですが、今回の原発事故を目の前にすると、どうしても、「原子力の世界」という「しっぽ」が「社会全体を振っている」ように見えてしまうのです。これに対してすぐ、原子力の世界は「しっぽ」ではない、むしろ「本体」もしくは「中核」なのだという反論が出てきそうですが、今回の深刻な事故を通して、多くの方々は、健全な地域社会の方が本体であるという、開かれた、健全な心に立ち返っているのではないでしょうか。ここで、なぜ「開かれた」ということを強調するのかと言いますと、原子炉は極端に閉じた、見えない内部世界(燃料棒や制御棒の世界)の象徴であり、それを制御・管理する「原子力の世界」も世間から見れば極端に閉じた内部世界になっているからです。そこには開いた対話・討論の場が十分に用意されているとはとても思いません。また、そこから出てくる情報も、どこまでが真実か、客観的なものかも分からないわけです。今回の事故で、私たちもかなり原子力の世界を覗けるようになりましたが、まだまだ、「犬がしっぽを振る」という正常な形にはなっていません。全局性を取り戻すためには、私たち人一人が、脱原発を視野に、再生エネルギーをベースにバランスのとれたエネルギー利用の方法について国民的議論を深める必要があるのではないでしょうか。私たちは原子力の利益にあずかってきた受益者の身であるとしても、そこに潜在するリスクや未来費用、社会的費用を看過するわけには行きません。


2012年3月   箕輪 光博


雨谷さんミニコンサート


小林名誉会長の基調講演


報告者 (左から
井上氏、長澤氏、藤野氏、吉村氏)


パネルディスカッションの様子




会長からのメッセージ  バックナンバー 
(10)退任のご挨拶
(9)新年のご挨拶
(8)秋の夜長
(7)マイナス×マイナスはプラス?
(6)威厳と歴史、そして保続
(5)新年のご挨拶
(4)これからの2年間よろしく
(3)新年のご挨拶
(1)会長就任にあたって

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