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会長からのメッセージ(14)
北海道現地研修会を顧みて
 今年の現地研修会は、9月8日から10日までの3日間、「道南地方における優良林業経営とブナ、ヒバ保存林視察」の研修課題で行いました。北海道森林管理局(協賛)の函館事務所、北海道庁(後援)の森づくりセンターにはお世話になりました。
 研修初日は、折りからの台風18号の名残が北海道にあったため、11時半函館空港集合の予定が大幅にずれ、さらに関西空港からのお二人は欠航のため不参加という不測の事態になりました。現地では被害も目の当たりにし、まこと自然の威力を実感した旅でした。
 初日は宿舎での北海道の森林・林業全般と道南を中心とした北海道国有林全般の講義でじっくり勉強しました。翌日は台風一過、白日のもと台風被害の実態に触れながら、一日中現場をじっくり見せてもらいました。早速今回のポイントの一つであるガルトネルブナ林(七飯(ななえ)町)です。これは明治2, 3年、ドイツ人貿易商のR.ガルトネル氏が故国を偲ぶため、渡島(おしま)半島の天然下種苗を集めてここに植えたといいますから、133年生以上ということになります。面積約0.25haと僅かですが、100本余りのブナ林が都市近郊の地にあるのは値打ちがあります。概して成長よく、なかには直径70cm、樹高35mの木も散見されました。ここで早くも台風によるトドマツの被害に遭遇しました。

ガルトネルブナ林 ガルトネルブナ林隣のトドマツ
ガルトネルブナ林


ガルトネルブナ林隣のトドマツ
幹折れ

 ここからは右に大沼をみて一路北上し、八雲町の小川家の山林です。小川英樹氏は昨年の全国林業経営推賞行事で林野庁長官賞を受賞しています。小川家は北海道開拓期に入植し、二代目、三代目が購入した山林114haを四代目英樹さんが父久夫さんと経営に励んでいます。研修旅行一同が意外に思ったのは、北海道でスギ主体の経営が行われていることでしょう。80年の伐期令までは徹底した間伐の繰り返しによって収入を確保し、将来構想は択伐をしながら天然広葉樹との針広混交林施業ということです。このような集約作業を支えるのは、115m/haという高密作業路網と林内作業車およびグラプッルです。小川父子の地道な努力には頭が下がる思いでした。

小川家山林のスギ 小川山林の解説をする小川英樹氏
小川家山林のスギ
思い切った間伐と高密作業路


前夜の勉強会で小川山林
の解説をする小川英樹氏
 昼食後はさらに国道5号線を北上し、ニセコ町にある千歳林業鰹蒲Lの「(きずな)の森」見学です。千歳林業の林業経営は昨年の天皇杯を受賞していますが、絆の森は林業経営とは別に、所有森林を市民の野外活動に開放するため整備中の森林です。道庁森づくりセンター支援のもと、11haを対象に樹木類植栽、林床整理、遊歩道新設が着々と進められ、駐車場・休憩施設・給排水施設の整備も計画中です。「森林と人の共生林」として夢多い事業です。

千歳林業(株)の「絆の森」 説明する角田義弘社長(右)
千歳林業(株)の「絆の森」

説明する角田義弘社長(右)
左は後志森づくりセンター橋本信行氏


 ここから東に向かい羊蹄山の麓を経て南下し洞爺湖南の有珠山に到着したのは夕刻近く。ここも今回研修のポイントの一つです。後志森林管理署長自らのご案内で噴火口跡、噴火当時の地震・火砕流などの生々しい被害と治山工事の現場を何力所も回り、宿についたのは6時を廻っていましたが、早速勉強会です。後志(しりべし)地区中心に国有林・民有林の活動の概要、千歳林業の経営紹介のほか、研修参加者の森林総研北海道支所の北原博士から「北海道のシカ」について話題提供を頂きました。宴会は話題豊富の一日を振り返りさらに洞爺湖慣例の船上花火に彩られ盛況そのものでした。宴会後も千歳林業の魚田社長を囲んで話題は尽きず深夜に及びました。

有珠山の西山火口 火山活動のため破壊された道路
有珠山の西山火口


火山活動のため破壊された道路
 翌日はいよいよ最大のポイントである千歳林業の経営現場です。千歳林業は昨年、大日本山林会の全国林業経営推賞行事での農林水産大臣賞受賞を経て、農での栄えある天皇杯に輝いただけに、前夜の議論でわかるように参加者の期待はいやが上にも高まりました。千歳林業の本杜は倶知安(くっちゃん)町で、従業員61名、所有林は喜茂別(きもべつ)町、京極町、ニセコ町など虻田郡にまたがる、1,740haということです。最初の喜茂別町の山林は、倒産したリゾート開発会杜から昨年購入したもので、カラマツ・トドマツ人工林100haをふくむ750haの経営計画を終え作業道をつけ、今年はすでに高性能機械でカラマツ林の間伐で収益をあげている手早さに感心しました。次は京極町約150haの山林です。これもリゾート開発予定地を購入したもので、購入時は未間伐のカラマツ林が僅かにあった程度の森林のうち66haを対象に複層林施業を実行中のものです。大型機械作業を導入するため列状伐採しカラマツ、アカエゾマツ、ミズナラ、カツラ、ウダイカンバを植栽しています。保残幅、伐採幅は試行錯誤の末現在はすべて20m、20mです。技術開発に挑戦する姿勢に感心しました。角田社長は前日から終始勢心に案内頂きました。

喜茂別山林のカラマツ林の間伐 喜茂別山林のなかに新設した展望台
千歳林業喜茂別山林のカラマツ林の間伐


喜茂別山林のなかに新設した
展望台、正面に羊蹄山が望める
京極町山林での列状伐採 列状伐採地に
京極町山林での列状伐採 列状伐採地に植栽された
アカエゾマツ


 最後は羊蹄山麓のふきだし公園です。羊蹄山からの地下水が大量の湧水となって吹き出ており、これを汲みに来る人々でにぎわっています。ここでゆっくり昼食。あとは一路東に向かい支笏湖を経て千歳空港で別れを惜しみました。私は札幌に向かい森林総研北海道支所を訪ね、翌朝台風被害生々しい北海道大学キャンパスを見て回りましたので、その記録写真を付録として掲載します。

                          2004年9月 小林 富士雄


羊蹄山山麓からの湧水 ふきだし公園
羊蹄山山麓からの湧水 ふきだし公園

北海道大学構内の倒木 北大名物ポプラ並木の風倒
北海道大学構内の倒木 北大名物ポプラ並木の風倒
手前に多数の根返り木



会長からのメッセージ  バックナンバー 
(1)会員あっての山林会
(2)木材輸入は水輸入
(3)これからの経営問題への取り組み
(4)現地研修会を顧みて
(5)大日本山林会第21回総会記念写真集
(6)木の神社
(7)岸本定吉先生を偲ぶ
(8)アメリカの森林問題と政治家と
(9)全国植樹祭と宮崎のスギ
(10)山林会平成16年度通常総会終わる
(11)ゆく半年、くる半年―山林会創立記念事業に思いを新たに―
(12)熊剥ぎ被害をテープ巻きで予防
(13)歴史に学ぶ