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会長からのメッセージ(22)
岡山・鳥取現地研修会
 今年の山林会現地研修は10月12日から3日間、近畿中国森林管理局の協賛と岡山県・鳥取県の後援を得て、岡山・鳥取の両県で行いました。山林会研修旅行が2県にまたがるのは私の知る限りでは例のないことです。中国山地をはさんでいる岡山県真庭と鳥取県智頭という、それぞれ特色ある林業地域を効率よく見学したいという思いからです。今年は昨年と違い、天候に恵まれ予定を順調に遂行できました。以下に参加出来なかった会員方々のために、簡単な紹介を試みます。
 
 参加者30名(うち山林会5名)の大半は10時半に岡山駅に集まり、そのほかは岡山空港ほかで揃い、一路高速道で真庭市に入ったのが午後1時、早速「バイオエタノールプラント」です。これは木材からエタノールをつくる三井造船の実証試験です。最近ガソリンの代替にエタノールを混ぜる試みが世界各地で行われています。この工場では実験と検討を繰り返す検討期間に当たったため、残念ながら岡山県職員による説明だけでした。


バイオエタノールプラント前での説明
(吉川比出夫撮影)


エタノールプラント蒸留棟


 続いて今回研修の重要ポイントの一つである銘建工業(株)(真庭市勝山)の見学です。会議室で中島社長が自ら経営哲学を熱心に説かれました。この会社は製材から出発し、今や集成材製造では日本の代表的会社であり、また木質バイオマス利用で廣くその名を知られています。見事に揃ったオーストリアなどヨーロッパ産のトウヒやマツのラミナが、絶え間なく流れる工程のなかで集成材になっていくのを目の前にして、国産材がこれに太刀打ちするためには、価格面はもちろん安定した品質と供給量という難関を解決しなければならないと痛感しました。バイオマス利用のうち廃材による蒸気発電は自家用ばかりでなく売電もしているという説明でした。また木質バイオマスを圧縮成型した燃料用ペレットの製造も順調のようでした。なお同社は国産ヒノキの高級柱材製材もしていますが今回は見られませんでした。


銘建工業(株)中島社長の会社紹介


バイオマス蒸気発電


集成材工場へ(内部は写真禁止)


梱包された集成材製品


燃料用ペレットの材料


ペレット製品


 1時間半にわたる工場見学のあとは岡山県森林組合連合会勝山共販所です。真庭林業の特徴はヒノキです。立派な大径丸太もあるが中小径も沢山集積されています。なかには昨年の台風被害木がかなり混じっています。昨年の台風の影響は未だ材価に陰をおとしているとのことでした。


岡山森連勝山共販所


台風被害材(薄い横縞が入っている)


 宿舎に向かう前にしばらく勝山の町並みを散策しました。勝山は美作(みまさか)(岡山県北部)と出雲を結ぶ出雲街道の要衝の城下町です。白壁と格子づくりの家々にのれんが翻る町並みと、その裏側を流れる旭川の清流を楽しみました。今日の泊まりは美作三湯の一つ湯原温泉です。宿舎「桃李莊」に到着次第例年通り岡山県林業の勉強会です。民有林・国有林の概況のほか、真庭市の井出市長から地元林業への熱い思いを伺いました。


勝山の酒造家


旭川の清流


 翌10月13日早朝出発。西に向かい1時間弱の真庭市清谷の戸田山林の視察です。この一帯は富原(とみはら)林業と呼ばれ、明治20年頃から造林が行われ、吉野林業にならい密植多間伐方式です。戸田顕治氏は所有山林21haと小規模ながら、106年生ヒノキを含む立派なヒノキ・スギ林の経営者です。択伐を基本にし、一方有用広葉樹の林を造成しています。


真庭市戸田顕治氏の山林


戸田山林の117年生ヒノキ


戸田山林での記念写真(原研二撮影)


戸田家(裏山からヒノキ林)


 中国自動車道を東に向かい津山で降り、国道53号を経由し鳥取県境の黒尾峠で昼食。いよいよ今回研修の重要ポイントの一つ智頭林業地です。黒尾峠を降りて間もなく大呂山林に入りました。整備された林道沿いに大径木からなる見事なスギ林が続きます。大呂隆則氏(智頭町大呂)は大山林所有者ですが堅実無比な経営者と拝察しました。現今の低材価のもとでは積極的な林業行動をしないという主義で、大呂氏はこれを休眠林業と表現していました。休眠とはいいながらも、林の様子から見て適切に間伐(択伐)が行われ間伐収入は確保されていると察しられました。


智頭町大呂隆則氏の山林


大呂山林(見事な手入れ)


大呂山林の大径スギ


大呂氏の説明


 町に入り智頭町森林組合の製材加工場の訪問見学です。ここはスギ丸太を機械剥皮し柱や厚板に挽く小規模の工場です。智頭のスギ材は目のつまった同心円状ですが、並べてある丸太にも昨年の台風被害が垣間見られました。澤米(たくまい)組合長は現今の林業不況下で森林組合が生き延びるための苦労と努力を切々と訴えられました。比較するのはどだい無理な話ですが、昨日の銘建(株)の流れ作業見学のあとだけに、この話は一段と深刻に感じました。


智頭町森林組合の澤米組合長の説明


智頭町森林組合の製材所(原研二撮影)


 智頭最後のプログラムとして石谷家住宅を見学しました。江戸時代からの資産家であった石谷本家は明治時代以降の山林投資で全国有数の山持ちとなり、その住宅は文化財として公開されています。先ず堂々たる玄関の上がり框と天井の梁桁に驚き、さらに豪壮な部屋や沢山の倉に感嘆します。また智頭の町には山陰から山陽に向かう宿場町らしい風情がが残っています。家々には例外なく杉玉が飾られていました。


石谷家住宅正面


石谷家土間


石谷家土間の天井の梁桁


智頭の町並み(各戸に杉玉の飾り)


 智頭町から鳥取市に降り対翠閣(しいたけ会館)で締めくくりの勉強会です。鳥取県の国有林・民有林の紹介に引き続き、今回とくにお願いした村嶌由直教授(鳥取環境大学副学長)から話題提供「林業・木材産業の現状」を頂きました。村嶌教授は日本の林業経営悪化が及ぼす広範な影響を述べ、国産木材の競争力を強化するために、これまでおろそかになっていた異業種との提携などの必要性を強調され、最後に森林は天からの「信託財産」であるという理念で締めくくられた。


村嶌教授の講演(原研二撮影)


対翠閣会議室での勉強会(原研二撮影)


 最終日10月14日は日本きのこセンターと乾燥地研究センターの見学です。普及目的のきのこセンターは付属菌蕈(きんじん)研究所を擁し膨大な菌株コレクションをベースに新品種開発などで成果をだしています。DNA解析や成分分析によって中国産椎茸と国産椎茸が判別できるという説明には驚きました。ここから砂丘に向かい鳥取大学乾燥地研究センターでは人工の砂漠地模型で水分や栄養の詳細な実験を見せてもらいました。そのあとは鳥取砂丘センターで昼食をとり砂丘を散策し、鳥取駅と鳥取空港で皆さんとお別れしました。


2005年10月 小林 富士雄



菌蕈研究所での説明(原研二撮影)


乾燥地研究センター・アリドドーム
(原研二撮影)


アリドドーム内の砂漠地模型


鳥取砂丘(元気な女性数人が登攀した)



会長からのメッセージ  バックナンバー 
(1)会員あっての山林会
(2)木材輸入は水輸入
(3)これからの経営問題への取り組み
(4)現地研修会を顧みて
(5)大日本山林会第21回総会記念写真集
(6)木の神社
(7)岸本定吉先生を偲ぶ
(8)アメリカの森林問題と政治家と
(9)全国植樹祭と宮崎のスギ
(10)山林会平成16年度通常総会終わる
(11)ゆく半年、くる半年―山林会創立記念事業に思いを新たに―
(12)熊剥ぎ被害をテープ巻きで予防
(13)歴史に学ぶ
(14)北海道現地研修会を顧みて
(15)早生樹の話―その1 中国の暖帯系ポプラ―
(16)伊勢神宮新穀感謝祭に参加して
(17)津波と海岸林
(18)吉野林業見聞記
(19)旧閑谷学校の楷樹
(20)早生樹の話―その2 ベトナムのアカシア―
(21)観光資源としての木