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会長からのメッセージ(30)
マヤ遺跡ティカルに思う
―その発見の歴史―


 ガテマラ北部低地の鬱蒼たる熱帯林のなかに、壮大な古代文明都市ティカルTikalの遺跡があります。1995年から97年にかけてガテマラ中部の森林管理計画作りの仕事で滞在中に、ここを2度にわたって訪ねる機会に恵まれました。いまも思うとエキサイティングな経験でした。2度の訪問時にとった写真をつけてティカルを紹介します。
 3世紀から9世紀にかけ繁栄した大都市ティカルは、碑文からの判読による西暦869年を境に忽然として歴史上から消えています。その遺跡が数世紀にわたって密林の奥深く眠っていたところ、17世紀のはじめ、布教のためメキシコから 南下したスペインの神父が道に迷い偶然に発見したということです。壮大なピラミッド群に遭遇した神父さんの驚きは察するにあまりあります。調査隊が入るのはそれからかなりたってからです。平川陽一:世界遺産・消えた文明のミステリー(PHP文庫)によると、初期の調査隊はローマやエジプトの文明が此処まで及んだのかと思い違えたといいます。因みにエジプトのピラミッドは単純な四角錐で、マヤのそれは四角錐の上部に神殿が載っている点が違います。そのためマヤのピラミッドは神殿と呼ばれています。
 ティカルの姿がほぼ明らかになったのは、1956からアメリカペンシルバニア大学がガテマラ政府の協力で始めた調査発掘プロジェクトによります。同大学William R. Coe:TIKALによると、現地には18世紀既に人が住み着いており、1853年ベルリン科学アカデミーが最初の探検を行い、その報告書に刺激され大小の探検調査が繰り返し行われたということです。 都市と周辺農村を含むティカルの全貌はペンシルバニア大学のプロジェクトに協力したガテマラ政府の航空調査によって漸く明らかになりました。森林に覆われ盛り上がった丘の下から石像の建造物が続々と見つかり、遺跡群は60km2にわたって3000に達しました。その中心部2km×2kmの範囲には 巨大な神殿Temple、アクロポリスAcropolisなどが密集し、そのまわりに廣い外周道路が走っています。
 各国各界の調査によって、ティカルは潅漑利水による農業や広域の流通による富の蓄積や文字の発明などのほか、驚くべき事実が明らかにされつつあります。増田義郎:沈黙の古代遺跡マヤ・インカ文明の謎(クオーク文庫)によると、ステラ(石碑)に刻まれた碑文の解読が進み、戦争を行わない平和なマヤ人の宗教都市とされたティカルの性格は、施設や碑文からみて、むしろ好戦的な都市であるとされ、従来のマヤ文明観に大幅な変更を迫ることになっています。
 人類の起源はアフリカ大陸東部の大地溝帯とされており、ここから各地に広がった人類が、それぞれ住み着いた地域に適合し特徴的な文化を育て文明を築きながらも、あるものは残りあるものは姿を消しています。ティカルに限らず文明の遺跡を訪ねるのは、単なる観光をこえて人類の歴史と未来に思いを凝ら手がかりを与えてくれる、まさに人類の遺産であると思います。因みにティカルは中南米の第一号として、1979年に世界遺産に登録されています。


2006年10月 小林 富士雄



ガテマラ空港から40分でフローレスFlores空港へ。ここからミニバスでティカルへ。これはミニバスが止まるペタン湖Peten Itza 最初に出会うコンプレックスQ。 コンプレックスというのは小ピラミッドと複数のステラなどを含む団地のこと。ステラにはマヤ暦年を示す数字があり、この読み取りから正確な設立年がわかる。

中央アクロポリスCentral Acropolisの中庭。30以上ある建物の集合体。建物は上位階級の住居跡らしい。

高さ47mの一号神殿TempleT(裏側)。日本のNGOなどの援助で修復中だった。
約100年前の一号神殿の写真(William R. Coe著TIKALより)。このように発見時は森林に覆われていた。

高さ38mの二号神殿TempleU。広場をはさんで一号神殿と向かい合う。
遺跡間を繋ぐ歩道。生物相が豊かで、見慣れない動植物につい立ち止まってしまう。 樹々の間から見える四号神殿の上部。六つの大神殿のうち規模、高さとも最大で、頂上の飾りまで70mある。

四号神殿の木製階段。これで回廊まで登る。

四号神殿頂上の回廊部。ここからの眺めは息をのむ景色だ。

回廊から真下の森林。この中に大小の遺跡が眠っている。

四号神殿から見渡す絶景。 森林の合間に一,二,三号神殿の上部がみえる



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(7)岸本定吉先生を偲ぶ
(8)アメリカの森林問題と政治家と
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(10)山林会平成16年度通常総会終わる
(11)ゆく半年、くる半年―山林会創立記念事業に思いを新たに―
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