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会長からのメッセージ(31)
再び林業経営について
 深刻な林業経営
 日本林業の現状は長い間低迷していますが、最近は低迷というより崩壊寸前とさえ感じられることさえあります。山林会の会長室を訪れる山林所有者から聞く話題の多くは深刻です。昨今の山元の材価では、収穫伐採後の再造林費用もまかなえず、切り捨て間伐さえもままならない。このままでは座して死を待つのみという人もいます。事実、長い間手が入らず林内が真っ暗になり、ために植生のなくなった林床から土砂が流れ出している造林地を時々目にします。
 その一方、加工や建築の現場では国産材と競合関係にある米ツガの製材品や欧州トウヒのラミナは安定した価格で需要に応えているように見えます。なぜ国産材が利用されないかについて需要側に聴くと、国産材の問題は価格とか乾燥など材質もさることながら、それよりもまとまった材料の安定供給が問題だということです。現状ではよほどの環境変化ない限り外材の輸入圧は衰えそうにありません。国産材が生き残るためにはコスト削減と安定供給によって外材との競争に勝つほかはありません。
 林業経営の生き残る道
 コスト削減については各地で多くの林業経営者がそれぞれの方法で努力しています。その姿は山林会発行の「選ばれた林業経営」シリーズなどで知ることが出来ます。個々の経営を成り立たせるために、いわゆる「顔のみえる家づくり」や市場情報利用による販売など山林会会員による成果もよく耳にします。しかしながら世界の木材利用の太宗がエンジニアリングウッドに移行しているなかで、国産材はムクザイだけに頼っては生き残れません。このように纏まった量の安定供給という要請に応えるためには、個々の経営者だけでなく多くの山林所有者が集団で組織的に出材することが必要です。組織的な集団経営によってコストダウンも可能になります。外材に代わって国産材が使われその利益が山元に還元されてこそ日本の森林と林業が生き残るのだと思います。
 山林会研究会「林業経営の将来を考える
 一昨年の今頃、会長からのメッセージ(3)「これからの経営問題への取り組み」で、所有と経営の分離による山林所有者の経営委託と、その先の団地法人化などについて大日本山林会が研究会「林業経営の将来を考える」を行っていることを書きました。ここに述べた団地法人化というのは藤沢秀夫氏の提案に基づくものです。
 所有と経営の分離の形態には色々考えられますが、その場合の必要条件は、森林所有者が森林などを出資すること、これを積極的経営を行う第三者に経営を委託することの加え、その経営体が持続できる経営規模であることです。わが国の伝統であった零細な資産保持的所有の多くが行き詰まっていることは多くの所有者には理解されているが、森林を林地ごと手放すことには心理的抵抗があるので、大方は現在の土地所有権を保持したまま法人に立木を出資するということになります。これが地域でできれば、分散している小林分がまとまった持続的経営の見通しが得られます。上記藤沢氏は法人の形態として株式会社を提案されており、これについては議論がありましたが、これを到達点として検討を行うことにしました。
 研究会の成果を公開シンポジウムへ
 検討会では餅田座長を中心に具体化への問題が出されました。先ず団地法人の取り纏めは地域に根ざした人物がが中心となり行い、経営者には企業的経営のノウハウをもった人物が望ましく、持続的経営団地法人の規模としては面積としては1,000ha、出材量としては年1,500m3程度であろうとされました。最も議論が集中したのは出資で、当面抵抗の少ない上木出資であるが、将来は林地込みも検討対象にすることとしました。最も難しい出資額の算定評価は、当面現在の立木評価を措定して進めるが、いずれの場合でも曖昧な林地境界確定は各地で問題になるでありましょう。
 このように検討すべき課題は限りなくあるし、これをもし実行するには施業計画など森林法関係や所有権など民法関係など法律絡みや行政絡みの問題点もありましょう。このように複雑な問題を提起したのは、冒頭述べた日本林業の成立に関わる重要課題であり、在野にある団体であるからこそ敢えてできるという思いに他なりません。
 このような提案を基にして、その具体像を探るため数カ所の候補地からモデル地区として山形県金山町を選び、ここ3年ほど検討を繰り返し行ってきましたが、難問があまりに多いため検討の進行は遅々たるものですが、漸く中間報告書をまとめました。これをベースに、来年1月15日の山林会創立125周年の記念行事としてシンポジウムを開催する運びとなりました。シンポジウムは山林会会員や招待者による記念式典に先だって次のように行います。自由参加で無料です。お出でをお待ちします。


2006年11月 小林 富士雄



社団法人 大日本山林会
 創立125周年記念公開シンポジウム

「林業経営の将来を考える」
―団地法人化の可能性を探る―


    日時:平成19年(2007年)1月15日(月)
      13:30〜15:30(開場13:00)
    会場:石垣記念ホール
      東京都港区赤坂1-9-13 三会堂ビル9階
      地下鉄 銀座線 虎ノ門駅下車徒歩8分
      銀座線・南北線 溜池山王駅下車徒歩5分
      丸ノ内線・千代田線 国会議事堂前駅下車徒歩8分

    参加費:無料(事前申し込み不要)

  ―プログラム―
   開催あいさつ  (社)大日本山林会 会長 小林富士雄

   話題提供
     ○現在日本林業が直面する林業問題と団地法人化
                (財)林政総合調査研究所 藤澤秀夫

     ○林業における団地法人の可能性
                筑波大学教授 餅田治之

     ○日本における農業法人の特質と課題
                筑波大学助教授 納口るり子

     ○コメンテータによるコメント
                行政サイド、現場サイド、研究サイド

   総合討論

                 お問い合わせ先
                 (社)大日本山林会
                 TEL 03-3587-2551、FAX 03-3587-2553
                 URL http://www.sanrinkai.or.jp


会長からのメッセージ  バックナンバー 
(1)会員あっての山林会
(2)木材輸入は水輸入
(3)これからの経営問題への取り組み
(4)現地研修会を顧みて
(5)大日本山林会第21回総会記念写真集
(6)木の神社
(7)岸本定吉先生を偲ぶ
(8)アメリカの森林問題と政治家と
(9)全国植樹祭と宮崎のスギ
(10)山林会平成16年度通常総会終わる
(11)ゆく半年、くる半年―山林会創立記念事業に思いを新たに―
(12)熊剥ぎ被害をテープ巻きで予防
(13)歴史に学ぶ
(14)北海道現地研修会を顧みて
(15)早生樹の話―その1 中国の暖帯系ポプラ―
(16)伊勢神宮新穀感謝祭に参加して
(17)津波と海岸林
(18)吉野林業見聞記
(19)旧閑谷学校の楷樹
(20)早生樹の話―その2 ベトナムのアカシア―
(21)観光資源としての木
(22)岡山・鳥取現地研修会
(23)森林総合研究所の百周年記念行事に参加して
(24)ネパールに思うこと
(25)不法伐採問題の一断面
(26)西夏王国のこと
(27)台湾現地研修旅行へのご案内―その1 阿里山―
(28)台湾現地研修旅行へのご案内―その2 太平山、棲蘭、明池―
(29)幸田文さんのこと
(30)マヤ遺跡ティカルに思う―その発見の歴史―