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会長からのメッセージ(24)
平成21年度現地研修会報告(6)
(3日目)
 幸いに天候は安定していて、晴天の中、スケジュール通りに宿を出発、最後の目的地である東京大学千葉演習林に向かう。バスは勝浦から国道128号線を西行し、安房天津までの約1時間程の道中に、大日本山林会名誉会長小林富士雄先生から「松野はざま先生」に係わるお話しをしてもらいました。松野先生については、「会長からのメッセージ(9)」を参照して下さい。明治時代にわが国近代林学を築いた先駆者としての松野先生の活動(独逸留学、帰国後の近代林業の普及活動、東京山林学校(東京大学林学科の前身)の創設と初代校長、山林局林業試験所(森林総合研究所の前身)の設立と初代所長、日本林業教育や研究の礎を築いたことなど)やクララ夫人のこと(松野先生の帰国後、先生を慕って来日され結婚された。日本人男性とドイツ人女性の結婚第一号、結婚するまでの経緯、結婚後、日本における幼児教育とピアノ指導の先駆者としての活動など)についてお話しをして下さった。小林さんの話し上手に搭乗者一同魅了され聞き惚れている間に目的地に到着した。実際は、小林名誉会長の話は中断という形で、演習林の視察に入りました。
 先ず、「松野先生記念碑」に立ち寄る。この顕彰碑(明治42年10月建立、石材は仙台石、礎石は御影石)は、国道を安房天津からそれて、清澄寺へ登る県道の途中の小高い岡の上の見晴らしの良い所に建てられていました。眼下には、国内外樹種見本林と高齢のスギ人工林が広がっていました。帝大名誉教授で、当時帝国森林会会長であった本多静六博士が『明治林業逸史』に「我国演習林の濫觴」について書いています。その中に演習林として購入した原野に自ら植林したことが記載されています。「…翌28年春から造林に着手した。その頃の清澄山は天津から清澄の部落まで、道路の上下共全部原野であって、こんな萱野に如何にして造林すべきか、自分は独逸留学中唐檜の植え付けをした外、初めてなので心配であったが…、真っ先に植えたのが長坂上のスギ林である。…その当時駒場から苗を荷馬車で霊岸島迄出し、外房廻りの汽船で天津に送った為に、苗が弱って、植え付けた苗に枯れが多く、彼岸詣での男女の口から「大学校の先生が植えた苗は見事に枯れるな」と云はるるのが辛さに、早朝道から見えるところの枯れ苗を抜いて歩いた…」とあります。当時を想像しながら遠景写真を撮りました。


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松野先生記念碑



明治28年当時は萱野であった林地。
現在は国内外樹種見本林及びスギ林


清澄の大スギ(千年杉)

 バスを清澄寺の駐車場で降り、先ず向かったのが清澄山の千年杉(樹齢は不明、目通りの太さ約15m、樹高47m)である。この杉は大正13年12月に国から天然記念物に指定されたそうです。
 その後、演習林の教官や職員の皆さんに迎えられ、演習林の車に分乗して、演習林の西境沿いの林道を走り、視察箇所々々で、車から降り、説明を聞く。昨夜の山田演習林長さんやコーディネータの鈴木先生のお話し、広嶋先生の『山林』誌への投稿論文の内容等を思い出しながら、林道沿いの林相を見学し、説明を聞きました。
@林齢150〜200年の尾根筋に保存されているモミ・ツガ天然林、スダジイが中間層を占めていました。林道の西側には県有林の広大な薪炭林に一斉造林した人工林が広がっていました。
Aスギ林2haを皆伐して新植している現場/鹿害防除対策の実態、伐採木は架線集材で搬出、スギ立木処分で5,000円/m3位、立木価格は150年生ヒノキ林の20%択伐材で6,000円/m3程度しかならない。補助金を使っても除間伐、枝打ちが出来ない状況であるとのこと。60年生でも間伐収入は無理な現状。伐出業者が過去は7業者あったが、現在は3業者に減ってしまっていることも問題とのこと。
B二段林の造成現場/上木90年生スギ、下木27年生スギ、上木本数はせいぜい500本位までが限度、林内照度は30%まで減少しているとのこと。
 林道は、演習林(面積2,200ha)の北西部に位置する郷台作業所まで続く。この作業所で車を降り、周辺の視察箇所を徒歩で見学する。
C郷台苗畑/抵抗性赤松苗の生産現場で、根切り作業の最中であった。
D孟宗竹林/1930年に開花・結実した孟宗竹の実生苗をここ郷台に植栽した竹林が67年生時(1997年)に全個体開花・結実し枯死した現場。現在はその実生苗が竹林を形成している。このことを明記した石碑。ここの孟宗竹の兄弟株が森林総合研究所のつくば本所と赤沼苗畑に植栽され竹林となっていたが、これらも同時期に全個体開花・結実し枯死している。


1997年(67年生)に一斉に開花・枯死し、
その後実生から再生した孟宗竹林


相ノ沢スギ品種展示林



104年生スギ人工林

E相ノ沢スギ品種展示林/九州のスギ挿し木品種を中心に33品種を昭和6年(1931年)に植栽した展示林、適切な間伐が行われデータが蓄積されている。
F104年生スギ人工林/平均胸高直径60cm、樹高40〜50m、360本/ha、蓄積1,500m3/ha。現状は、要間伐林分状態であるとか。同じ林分の中に1916年に設置され5年毎の調査記録が蓄積されている吉田試験地(森林経理学教室吉田正男教授の設定した試験地)があるそうです。
 視察を終え、作業所に戻り、学生実習で使われる畳の間に落ち着き、そこで遅い昼食をとる。
 昼食後、演習林の車でバスが待つ上総亀山の亀山湖駐車場まで送ってもらい、そこで、演習林の皆様と別れ、帰途につく。バスは亀山ダムから国道465号線、410号線(久留里街道)を北上し、木更津東より東京湾アクアライン連絡道に入る。この道中でも小林名誉会長の名調子による松野先生の続き話に聞き惚れました。「海ほたる」でトイレ休憩し、その後解散場所のJR東京駅に向かいました。最後に、会長から今回の研修会への参加と協力に対するお礼、新型ウィルス風邪も関係なく無事終了できた安堵と次回の研修会での再会への期待を述べ解散となりました。稔りの多かった現地研修会であったと喜んでいます。現地の皆様いろいろとお世話になりました。御礼申し上げます。


平成22年1月   大貫仁人



会長からのメッセージ  バックナンバー 
(1)ご挨拶
(2)水のかたち
(3)平成19年度現地研修会報告(1)
(4)平成19年度現地研修会報告(2)
(5)平成19年度現地研修会報告(3)
(6)平成19年度現地研修会報告(4)
(7)平成19年度伊勢神宮新穀感謝祭に参加して
(8)林業用ニューマシン
(9)松野はざまと大日本山林会
(10)長伐期林業と外山三郎先生
(11)平成20年度現地研修会報告(1)
(12)平成20年度現地研修会報告(2)
(13)平成20年度現地研修会報告(3)
(14)平成20年度現地研修会報告(4)
(15)平成20年度現地研修会報告(5)
(16)平成20年度現地研修会報告(6)
(17)『明治林業逸史』の復刻版刊行について
(18)当会の「新公益法人制度」への対応について
(19)平成21年度現地研修会報告(1)
(20)平成21年度現地研修会報告(2)
(21)平成21年度現地研修会報告(3)
(22)平成21年度現地研修会報告(4)
(23)平成21年度現地研修会報告(5)
(25)「林業経営『創意工夫』表彰行事」のスタートにあたり
(26)「公益社団法人大日本山林会」への移行登記完了
(27)「公益社団法人・大日本山林会」の設立総会と第一回参与会議報告
(28)平成22年度「林業経営“創意工夫”賞」決まる
(29)平成23年度参与会議と役員改選(山林会を辞するにあたって)

バックナンバー(前会長)