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会長からのメッセージ(5)
平成19年度現地研修会報告(3)
(第2日目:10月25日(木))

 2日目は激しい雨音で目を覚ましました。長年の願いが叶った折角の魚梁瀬天然杉見学に雨天とは運がないな、昨夜の天候祈願のお酒が足りなかったかなと反省しながら朝食を楚々と済ませ、雨の中の山行きの準備をしてバスに乗り込んだ。出発の頃には雨もやや小降りになってきた。宿の前にある「森林鉄道」を記念写真に撮る。バスは県道370号線を北上、安田川流域から奈半利川流域へと尾根を超え、ロックフィル式ダム・魚梁瀬ダムを過ぎ、貯水池を右に見ながらくねくね道を北上し、魚梁瀬大橋を渡り、魚梁瀬森林事務所のある魚梁瀬集落に入る。この頃には空も明るくなり、雨も小降りになってきた。貯水池から離れ、さらにくねくね道を奈半利川を遡上し、県道の終点、千本山登山口の千年橋に到着。幸運にもこの頃には雨が止んだ。
 国有林千本山保護林見学の道案内は、安芸森林管理署の井上康署長と魚梁瀬森林事務所の大原氏で、大原氏が先頭に立って要所要所で説明をしてくれた。先ず、千年橋を渡ったところで林野庁の「森の巨人たち百選」の「千本山・橋の大杉」(胸高直径:212cm、樹高:54.2m、推定樹齢:200年)が出迎えてくれた。ここを過ぎると、急斜面の登りになる。道はよく整備された木道の階段で、 照葉樹林の中に巨大なスギが散在するのを眺めながら階段を登って行く。途中にはテラスがあって、そこにはベンチが置かれたりする。しかし、雨上がりの木道は滑りやすく油断できない。手摺りにつかまりながらこわごわと登る。大きな杉の木が目立つようになると、階段から開放され、杉林の中を緩やかに登って行くと、親子杉にたどり着く。そこは広場になっていてベンチが置かれていた。この周りにもたくさんの巨木が立ち並んでいる。ここから先はすばらしい杉林が続く。この周辺10ha程の林分の平均値は樹高37m、胸高直径76cm、1本当たり材積6.15m3、ha当たり材積1,892m3との案内板が立っていた。樹齢は200〜300年ほどである。親子杉から林立したスギ林分が続き、800mで「鉢巻落し」に着く。一目千本と呼ばれるほど密度の高い林立した巨大な魚梁瀬スギの樹梢を仰ぎ見ようとすると鉢巻きが落ちるほど頭が真下を向かないと不可能である。途中途中で説明を聞きながらの行程はここまで1時間20分程、全体のスケジュールから千本山保護林の見学はここまで、あと10分くらい登ると傘杉堂のある展望台まで行けるとのことであったが、記念写真を撮って引き返すことにした。大正7年に「学術参考保護林」として、その後、昭和2年には周辺の森林も保護林に加えられ、更に平成2年には「林木遺伝資源保存林」として自然のままに大切に守られきたという。保護林の面積は178.20ha、標高は540〜1,084mである。復路は下り道で、木道は特に滑りやすく、手摺りを助けに足下を確かめながら慎重に下った。全員、無事にバスまで戻り、途中の魚梁瀬森林事務所の施設を借りて、昼食の弁当を頂く。
 その後、一路来た道を戻り、ほぼスケジュール通りに、今夜の宿となるホリディ・イン高知(南国市)までたどり着く。
 予定どおり16時30分から宿の会議室で勉強会を開始した。話題提供は@「高知県の森林・林業」(高知県森林部副部長・臼井裕昭氏)、A3日目の現地視察箇所である「溝渕林業(株)の林業経営」(会長・溝渕源樹氏)、B3日目の現地視察箇所である「(株)とされいほくの林業経営」(副社長・半田州甫氏)、C「わが国における森林・林業と木材市場」(高知大学教授・川田勲博士)等であり、川田先生には、コーディネータの役も務めて頂いた。
 @では、高知県パンフレット「木の産業づくりと森の再生プラン・・木を育て、木に親しみ、木を活かす…」(平成18年3月)を資料として、高知県の森林・林業の現況、今後5年間に重点的に取り組み、実現を目指す8つの目標、木の産業づくりと森の再生プランにおける数値指標設定、森の工場づくり、森林環境税等について具体的な説明がありました。5年間の期間が平成20年度までの環境税については、県民の意向を反映させることで継続の方向で検討しているとのことでした。
 Aでは、溝渕氏が作成した森連共販所「スギ・ヒノキ別加重平均単価」推移表をもとにヒノキの価格下落がスギに比べて大きいこと、平成5年との対比でスギが43.4%、ヒノキが37.2%と下落傾向が続いている状況から林業経営の難しさが示されました。その後、溝淵林業の三代目として、昭和43年当時から「歩く林業から走る林業」へ経営方針を変更したこと、その基盤となる実践的「作業道の開設」について、長年の経験をもとに丁寧な説明がありました。特に、路網開設の最大要件である水処理に「盛土式横断排水構(「溝」ではない)」が効果的であることを力説されました。最近、「……式」といった林道・作業道開設法が喧伝されているが、囚われてはいけない、良いところだけ参考にせよとの忠告を頂きました。
 Bでは、(株)とされいほくの経営基本方針(経営戦略)について当社作成の小冊子をもとに説明が行われた。「豊かな森林の創造」と「林業収益の山元還元」を企業理念とし「利用間伐」を基幹的業務として取り組んでいる事業の概要が示されました。自社有林ばかりでなく地域の私有林も巻き込んだ間伐事業は、とされほく独自の間伐材生産システムにより順調に規模拡大をしているとのことです。生産システムとしてはH型架線集材まで取り込んだ5種類のシステムを地形条件に合わせて駆使することで 低コスト間伐(労働生産性10m3/人・日以上を目指す)を実施し、50%間伐で20〜70万円(平均40万円)/haの山元への還元を実現しているとのこと、また、このことによって周辺の森林所有者からの間伐委託が増え事業展開が将来も順調とのことであった。当社の基本戦略である「収益の還元」と「雇用の拡大」は順調のようで、現場社員の定着状況も示され現在16名で平均年齢32歳とは感心しました。
 Cでは、1.危機に直面する森林管理(多様化する森林被害、木材価格の低迷と森林管理の後退、森林管理の放棄と伐採跡地の放置化)、2.木材市場の新たな展開(大型木材資本の国産材資源利用への動き、危惧される略奪型資源利用、求められる循環利用システム)について資料での具体的な数字によって説得力のある説明がありました。
 時間が限られた中での密度の濃い上記の話題提供は、参加者全員にとって満足のいく勉強会になりました。勉強会の後の懇親会は、四国森林管理局長・中山尊裕氏もはせ参じて下さり、勉強会の話題提供者を囲んで賑やかな情報交換の場となりました。


2008年1月 大貫 仁人



森林鉄道


千本山国有林にて魚梁瀬森林事務所の
大原氏の説明を受ける

千本山国有林の木道を
元気に登る参加者


千本山国有林の林内


「鉢巻き落とし」


2日目の話題提供(ホリディ・イン高知)


高知県森林部副部長・臼井氏
による話題提供

溝渕林業(株)会長・溝渕氏
による話題提供

(株)とされいほく副社長・半田氏
による話題提供

高知大学教授・川田氏による講演


懇親会風景(ホリディ・イン高知)



会長からのメッセージ  バックナンバー 
(1)ご挨拶
(2)水のかたち
(3)平成19年度現地研修会報告(1)
(4)平成19年度現地研修会報告(2)
(6)平成19年度現地研修会報告(4)
(7)平成19年度伊勢神宮新穀感謝祭に参加して
(8)林業用ニューマシン
(9)松野はざまと大日本山林会
(10)長伐期林業と外山三郎先生
(11)平成20年度現地研修会報告(1)
(12)平成20年度現地研修会報告(2)
(13)平成20年度現地研修会報告(3)
(14)平成20年度現地研修会報告(4)
(15)平成20年度現地研修会報告(5)
(16)平成20年度現地研修会報告(6)
(17)『明治林業逸史』の復刻版刊行について
(18)当会の「新公益法人制度」への対応について
(19)平成21年度現地研修会報告(1)
(20)平成21年度現地研修会報告(2)
(21)平成21年度現地研修会報告(3)
(22)平成21年度現地研修会報告(4)
(23)平成21年度現地研修会報告(5)
(24)平成21年度現地研修会報告(6)
(25)「林業経営『創意工夫』表彰行事」のスタートにあたり
(26)「公益社団法人大日本山林会」への移行登記完了
(27)「公益社団法人・大日本山林会」の設立総会と第一回参与会議報告
(28)平成22年度「林業経営“創意工夫”賞」決まる
(29)平成23年度参与会議と役員改選(山林会を辞するにあたって)

バックナンバー(前会長)