2003年11月19日
小林 富士雄
今年度の現地研修会は10月29日から31日までの3日間、課題「森林復旧の原点と持続可能な森林経営」のもと、中部森林管理局名古屋分局(協賛)、愛知県(後援)の協力により、愛知県三河地域で行われました。幸い終日好天気に恵まれ印象深い研修旅行でした。
愛知県の西半分はかつて荒廃地から復旧治山によってよみがえったことで有名な地域であることから、1日目は瀬戸市にある東京大学愛知演習林で柴野林長から復旧治山の歴史と、見事に復旧した森林の効果がいかに大きく多様であるかを数量的に示され一同感銘しました。夕方は例年どうり名古屋分局管内国有林の概要、愛知県の森林・林業の説明のあと、稲武町の太田町長や前町長の古橋茂人氏から地元の林業事情を伺いました。
今回の主要なポイントは東三河の林業経営です。2日目の午前は江戸期から続く稲武町古橋家(現在は財団法人古橋会)の森林です。天保年間植栽のスギ(約160年)やスギ、ヒノキの非皆伐施業による複層林など当主古橋茂人氏の熱意こもった説明による案内のあと、奥様の説明による幕末から明治維新の志士などの書画を中心にした古橋懐古館の膨大なコレクションに圧倒されました。
午後は原生林で有名な段戸国有林に入り、原生林の一部とヒノキ天然更新と有用広葉樹転換試験地などを垣間見てから、各種渓流工や治山工を野外展示している「治山ガーデン」の説明など国有林ならではの勉強をしました。バスは南下し暮れなずむなか、鳳来町の金田康嗣氏経営のスギ林を案内頂きました。林道づくりと収穫作業はご子息が殆どすべてひとりでこなしているというご説明でした。
金田さんは森林組合長を兼ねながらも今回の研修旅行には準備段階から全面的にお世話頂きました。夕方は熊崎実氏や鳳来町の下江町長や金田さんの話題を中心に、熊崎氏をコーディネーターに熱っぽい議論が続けられました。熊崎さんの提供話題は「山林」に掲載されます。
3日目は鳳来寺山で鳳来寺・東照宮をめぐり、大多数が山上から1,400の石段を下り途中の有名な傘杉を見るという健脚コースに挑みましたが、私は残念ながら健脚組を断念しました。
休む間もなく参道下に近い丸山修氏の見事なスギ母樹林の見学、続いて移動し、昭和22年設定し大径材生産を目標に7回間伐を繰り返してきた「三河優良材展示林」の説明を丸山さんから伺いました。丸山さんは最近、事故に遭われ杖を手にしながらも明晰なご説明でした。これだけ立派な森林でも今の材価では再投資に回らないという悲痛な声が胸に残りました。
最後を飾る見学地は鳳来町からさらに南下した新城市にある、三河材の拠点三河材流通加工センター(HOLZ三河)です。面積約4ha、職員50名弱という中規模の事業体であるが、原木市場、原木選別、皮剥、製材、乾燥、加工(柱、板、プレカット、防虫防腐)が順序よく配置され、最新のロボット製材、柱角の含水率・強度検査の自動化など見るべきものがありました。ただ心残りは製品販売の営業の見通しを聞く時間がなかったことです。これでお世話になった方々に別れを告げJR豊橋駅で解散しました。
最後の感想:今回は参加者にも説明者にもかなり年輩者がおられましたが、皆さんの健康と意欲には正直私は圧倒されました。
2003年11月 小林 富士雄