2008年1月10日
大貫 仁人
(第3日目:10月26日(金))
計画通り7時に、生憎の雨天のなか、林道にも乗り入れができるようマイクロバス2台に分乗して宿を出発。県から森林部森づくり推進課チーフの谷口勝久氏が乗り込んで案内役を果たして頂いた。道中の風物のこと、高知県の林業・木材産業について県の取り組みも含めていろいろと案内してくれた。
最初の視察地である溝渕林業(株)(南国市)の現場では、溝渕会長が傘を差しながら出迎えてくれました。先ず案内してくれたのが上層のスギ95年生、下層のスギ20年生・400本/haの複層林施業を実施した現場である。複層林施業は台風害の危険性があることを強調された。次の視察箇所はプロセッサによる造材現場である。本降りの雨の中の路網密度178m/ha(県・市道を含む)の現場での住友建機(株)のKESLAハーベスタによる伐木・造材作業は圧巻でした。最後に、その現場から奥へ200m位入ったところのヒノキ林を視察しました。林床植生が豊富な素晴らしい林で溝渕会長の森林経営哲学を垣間見た思いでした。また、その林に行くまでの林道で、溝渕会長が昨晩に話された低コスト「盛土式横断排水構」の実際を見ることができました。雨が本降り中で、この工法の有効性を参加者一同納得することができたことは、我々にとって幸いでした。
溝渕会長他関係者に見送られて次の視察箇所・(株)とされいほくの現場(大豊町)に向かいました。途中で(株)とされいほく・副社長・半田氏が出迎えてくれ、昼食後、先ず案内されたのが半田氏が森林施業のモデルとしている「浜口林業」の現場でした。雨は幸いにもあがっていました。
「浜口幸弘氏とその林業の概要」というパンフが配布されそれに基づき説明がありました。浜口氏は嶺北消防署に勤務するサラリーマン林業家で、すべての森林作業や間伐生産事業(集材架線の架設まで)を「一人作業」システム化を創意工夫し、休日や非番日を利用して、長伐期/複層林施業を、労働生産性4m3/人・日で事業を行っているとのこと。面積約30ha、人工林率98%(スギ、ヒノキ、クヌギ)、林内路網密度210m/haといった経営体森林(40年生)から過去4回の間伐によって4,000万円の収入をあげているとは驚きでした。樹冠率50%を理想とする定性間伐(間伐率50%程度)を繰り返しているという、その林分を見学して、浜口氏の理想が着実に実現されていることを直に見ることができました。その林分には案内板「豊かな森林(もり)づくり施業モデル林」が立てられており、浜口氏の実施している育林施業体系が示されていました。浜口氏のモットーは「健康、やる気、段取り」と、「説明責任(森林所有者がどのような森林管理をしているのかを一般住民に説明する責任)」を果たすことであるとのこと全く感心しました。
次に案内されたのは、(株)とされいほくが委託事業を行った、40年生スギ林で初回の本数50%、間伐後2年目の林分と50年生スギ林で2回目の間伐(本数で間伐率50%)後2年目の林分でした。H型架線集材をした現場で労働生産性4m3/人・日、山元還元40万円/haを実現したとのこと。昨晩の説明で、「本数で50%の間伐率とは乱暴ではないか」との懸念が、間伐後の林分状況と林床の植生回復状況の実態をみて解消することができました。過密林分の解消、労働力への対応、採算性の確保、残存木の保全に間伐率50%の強度間伐が必要であるとする半田氏の主張を具体的に理解することができました。
参加者からは説明役の半田氏に様々な質問が続いていましたが、スケジュールの関係で現場を離れねばならない時間となりました。半田氏ほか関係者の皆さんに見送られながら空港に向かいました。帰途の車内は、今日の現地研修の話で賑やかでした。最後に来年の現地研修会での再会約束して、高知空港で解散しました。実りの多かった現地研修会であったと喜んでいます。現地の皆様いろいろとお世話になりました。御礼申し上げます。
2008年1月 大貫 仁人