平成20年度現地研修会報告(6)

2008年12月15日
大貫 仁人

(3日目)
 いよいよ研修日最後の日は、内宮早朝参拝からはじまりました。神宮崇敬会の職員のご案内で、神宮会館6時に出発し、内宮正殿へと向かいました。神宮全体のことや内宮のことなどいろいろなことが説明されました。宇治橋外側鳥居の前では、宇治橋のこと(総檜造りで長さ101.9mあり、宮大工と船大工の合作であること、式年遷宮4年前に20年に一度架け替えられること(今度は平成21年に計画)、20年でおよそ1億2千万人が渡るること、そのため橋板がすり減ってでこぼこになるため修理が絶えず必要なこと等)、鳥居のこと(橋の両端にある大鳥居は、内側は旧内宮・御正殿の棟持柱が、外側は旧外宮・御正殿の棟持柱が使われていること、これらはさらに20年経つと、内の鳥居は鈴鹿峠のふもとの「関の追分」の鳥居(東海道と伊勢路の分かれ道の伊勢路の入り口の鳥居)、外側の鳥居は桑名の「七里の渡」(宿場の宮宿(愛知県名古屋市熱田区)から桑名宿(三重県桑名市)までの海上の渡しで、かつての官道)の鳥居として、更にその後も他の神社に譲られて再利用されるなど100年近くもリサイクルされること、遷宮のため造替えされる内宮、外宮、別宮の材の全てがこのようにリサイクルされていくこと等)について説明を受けました。宇治橋をそして火除橋を渡り、手水舎で手水をし、いよいよ内宮・御正殿に向かう。道すがら更にいろいろと興味深い説明がありましたが割愛します。御正殿では、女性の参加者(群馬の内山さん)の音頭で全員揃って「二拝二拍手一拝」しご参拝が終わりました。

  • 宇治橋の外側鳥居の前
    宇治橋の外側鳥居の前
  • 五十鈴川の御手洗場
    五十鈴川の御手洗場
  • 新御敷地
    新御敷地
    (既に、地鎮祭も済んで、新正殿建設の準備が進められている)

 神宮会館に戻り朝食を済ませて、いよいよ神宮司庁営林部事業課長の神宮技師倉田克彦氏のご案内で神宮宮域林の神路山山林視察に出発した。神宮林務部のマイクロバス2台に分乗し、五十鈴川沿いに上流へ向かう。川の両側60mは禁伐の第1宮域林である、昭和49年に山火事で4町歩の被害があった後はない、白ヤブツバキや伊豆千両の自生地である、胸高直径40cmのヤブツバキが鹿害で枯れた、鹿の生息数は18.5頭/haと多く、下層植生や施業に被害大である(途中の広葉樹林の林床がほとんどなにも無いくらい綺麗になっていることから被害の大きさを実感した)ことなどの説明を受けながら車は視察林分に到着した。
 視察林分は、昭和2年の植栽で、受光伐方式(後述)による6回の間伐が済んだヒノキ林分であった。ここで、宮域林のヒノキ人工林施業について説明があった。資料に基づいて概要をまとめる。

  • 80年生のヒノキ林分
    80年生のヒノキ林分
  • 二重ペンキ木と一重ペンキ木
    二重ペンキ木と一重ペンキ木
  • ヤマビル
    ヤマビル
    (箕輪副会長が事前調査の折に、吸い付かれ、その後、腫れと痒みで難儀した)

 御用材は胸高直径60㎝程度の立木からの採材が主体を占めていることから、この径級の材を短期間で生産するため、大樹候補木を選定し、その木の肥大成長を促進する施業「受光伐方式」を行っている。この大樹候補木は2~3回目の間伐を行う時点で選定し、「大樹候補木」(最終伐期まで残す木)として二重ペンキ、これに次ぐ木を「御用材候補木」として一重ペンキで鉢巻き表示する。大樹候補木を50~70本/ha程度選べる林分を第1作業級(A林分)、これ以外を第2作業級(B林分)とし、B林分でも大樹候補木は10~15本/ha選定する。A林分、B林分ともに二重ペンキ木と一重ペンキ木合わせて200本/ha程度の選定を目標とする。平成17年で二重ペンキ木は本数で29,804本となっている。
 間伐は、大樹候補木の肥大成長を促進するため、隣接木で枝先が触れあう木を伐採する(受光伐)方式をとっている。受光伐は大樹候補木に対して行い、これ以外は通常の間伐をしている。間伐後に広葉樹が侵入してきたら、有用なものは育成してゆき、ヒノキと広葉樹の混交林へ誘導している。

造林奉仕記念碑の前での集合写真
造林奉仕記念碑の前での集合写真

 目標は200年で100本/ha程度、平均胸高直径で大樹候補木は100㎝以上、御用材候補木は60㎝以上としている。 
林齢別計画成立本数(ha当り)は、4,000本植え→20年生(1,500本)→50年生(480本)→80年生(280本)→100年生(200本)→200年生(100本)とのこと。
 鹿の被害防止のため、新植地を防除ネットで取り囲んでいるが、二重ペンキ木、一重ペンキ木にも被害が出るようになっているとか。特に、鹿の通り道のものが被害が大きいとのこと、参加者からそのような場合 の被害回避の方法などが提案されたりもした。
 実際の二重ペンキ木と一重ペンキ木を見学しながら、倉田課長から参加者に対してその選定が適切であったかどうかとの問いかけに対して、いろいろな反応があり愉快であった。 枝打ちは8mまで行っているとか。林分の生長は3~4m3/haとか。ツバキ、ヒサカキ、ユズリハ、サカキ、伊豆千両、マツカゼソウなどの下層木が豊富な林分であった。
 この林分を後にして、帰り道に、わざわざ「大日本山林会 造林奉仕記念碑」のある山路山事業所跡に立ち寄ってくれた。参加者一同感激し、早速、記念写真に収まった。
 ここを最後に宮域林の視察を終え、次の視察地、神宮徴古館・農業館に向かう。係官の案内で徴古館では、神嘗祭や式年遷宮で新調される神様の調度品(装束や神宝)、農業館では神宮御料地(神田、御園・御塩殿・干鯛アワビ調整所等)での生産品を見学しました。これで今回の研修は終わりである。
 この後、「伊勢おかげの里」で昼食をとり、一行は伊勢自動車道→東名阪自動車道を北上し解散場所のJR名古屋駅に向かった。バスの中で全員から今回の研修の感想を自己紹介を含めて発言して頂きました。あっという間に終着駅に近づき、最後に、会長から今回の研修会への参加と協力に対するお礼と次回の研修会での再会への期待を述べ解散となりました。実りの多かった現地研修会であったと喜んでいます。現地の皆様いろいろとお世話になりました。御礼申し上げます。

平成20年12月 会長 大貫仁人