平成23年度参与会議と役員改選(山林会を辞するにあたって)

2011年5月7日
大貫 仁人

 この度、平成23年度定期総会が5月27日に開催され、そこで「役員の改選」が議決されました。

平成23年度参与会議

 総会に先駆けて参与会議が開催されました。昨年10月の「公益社団法人大日本山林会」設立総会の時に開催した第1回「参与会議」で、静岡県の前参与・伊藤信夫様から「 これまで日本林業が材価の関係から伐期を延ばし、並材生産→中径材生産→大径材生産という成り行きに任せた森林育成をやってきたが、本来は、木材の需給関係から決まるべきものであり、路網整備とも関係するので、本来的な森林の育成のあり方をどうすればよいか皆で考えていこうではないか」という趣旨のご意見が述べられました。
 このことに関連して、今回の参与会議の議題を「長伐期森林経営の将来性を考える」と致しました。具体的には、森林総研に委託した調査研究「針葉樹造林大径木の製材木取り」の成果を報告し、これをもとに、慢性化しつつある木材価格の低迷の中で伐期先送りの結果として全国的に進められている「長伐期大径材生産林業」の将来性について意見交換をし、この問題について山林会として今後どのように関わればいいのかその方向性についてご意見を頂きました(詳細については、『山林』誌に掲載する予定です)。
 この度の東日本大震災による反原発運動の高まりとバイオマスを含めた自然エネルギーへの期待の高まりの中で、充実しつつあるわが国人工林資源を有効に活用していくためには、「国産材の需要」の視点から始まる大きな炭素循環の輪(①木造住宅・家具、紙製品→②解体材、古紙→③再利用→④エネルギー利用→⑤森林によるCO2吸収・固定(光合成)→⑥木材資源→⑦製材・木質材料、チップ→①→②→……)を出来る限り太くしていく努力が必要であり、この循環の中で「長伐期大径材生産林業」が評価され、市民権が得られるものと期待しているところです。

役員の改選と会長の退任のご挨拶

 この総会で「役員改選」がおこなわれ、私は会長職を退くことになりました。
 この2期4年間、「山林会」の歴史の重みを噛み締めながら、いろいろと楽しく務めさせて頂いた、というのが実感であります。会長職を全うできましたこと、偏に会員並びに役員の皆様のご支援・ご協力の賜物と心より感謝申し上げます。
 また、この度、役員並びに執行部の交代により、理事及び監事を退任されます方々に対しまして、山林会のために長年ご貢献頂いたことに御礼申し上げます。
 特に、副会長の三澤毅様には、小林富士雄会長の時代から今日まで8年間にわたり、副会長という要職で、会の運営を全面的に助けて頂きました。その長い間のご苦労に感謝申し上げる次第です。
 さて、山林会が装いも新たにした「公益法人丸」を無事に船出させてホッとしていた矢先でした。湾内は良かったのですが、外洋に出ようとした途端に今回の「東日本大震災」、国難ともいうべき事態に突入してしまったわけです。「想定外」という大津波にぶち当たってしまいました。ところで、「国家はいろいろな大きなシステムで成り立っている。このシステムは、ある想定の範囲内で機能するように設計されているが、これが「想定外」でつまずき、混乱を始めた。「電力・エネルギーシステム」、「年金・社会保障システム」、「市場システム」、「通信システム」(通信回線が維持されるという想定で)しかりだ。この「想定外」という大津波に立ち向かわなければならないという大きな時代の変革期に突入したのではないか」と、哲学者・内山節さんが「時代を読む システム依存からの脱却(東京新聞、平成23年3月28日)」で述べておられます。
 この時期に、この大日本山林会の「公益法人丸」の船長を交代させ、執行体制を強化できたことはグット・タイミングあると考えています。
 この活力のある新しい執行体制で必ずやこの荒波を乗り切って、民間の森林・林業の振興という大きな目標に向かって大航海をして頂けるものと確信しています。
 新執行部に対して、会員の皆様のご支援・ご協力をお願しまして、私の退任の挨拶と致します。長いことありがとうございました。

平成23年5月 大貫仁人