2013年6月20日
箕輪 光博
さわやかな季節となりました。皆さんも、周りの緑や花からたくさんの元気をもらっておられることと思います。私事で恐縮ですが、小生は5月生まれですので、この季節が一番好きです。
さて、6月24日、100名近い会員の方々の参加を得て、平成25年度大日本山林会総会が、赤坂溜池の三会堂ビル9階石垣ホールで開催されました。最初に、日本林業協会の飯塚会長から来賓として当会に対する過分の励ましのご祝辞を賜りました。ここに衷心から謝意を表します。また、会員の皆さま、理事、監事、参与の方々のご協力、ご支援のお陰で、平成25年度の公益事業が滞りなく行われましたことに関して、あらためて厚く御礼申し上げます。
ところで、この1年を振り返ってみますと、特筆すべきことが3つあります。その第1は、機関誌『山林』の電子情報化(PDF化)がほぼ完了したことであります。『山林』は明治15年の発刊以来、『大日本山林会報告』、『大日本山林会報』、『山林』(昭和3年6月号から)と名称を変えつつ、毎月刊行され、この6月号で1549号を数えるに至っております。この130年以上にわたる長い期間、先輩の方々は、関東大震災や戦争等の苦難を乗り越えて絶やすことなく機関誌を発行してきました。この偉大なる事業に対してはただただ頭が下がるのみです。今回のPDF化により、貴重な情報を多くの方々と共有できることは当会にとってこれ以上の喜びはありません。
第2は、130周年記念事業として、「なでしこ」の方々の協力の下に、「森林教育の新たな展開」、「林業の復権」、「食文化で山村を元気に」の3つのテーマを掲げて、3回にわたって「なでしこシンポジウム」を開催したことであります。本シンポジウムは、毎回、100名を超す方々のご参加をいただき、これまでどちらかといえば、堅いイメージがつきまとっていた「山林会」の雰囲気を和らげる上で一役買ったと自負しているところです。
そして3つ目は、経常業務である当会の経営推奨行事から推薦された林業経営者:岡橋清元氏(奈良県)が、昨秋の農林水産祭で天皇杯を獲得したことです。本会林業経営推奨行事からの推薦者としては、昭和37年の第1回農林水産祭での受賞者:福田孫光氏から数えて24人目の天皇杯受賞者です。その他に、石井哲、諸冨一文、守分巧の3氏が創意工夫賞を受賞しました。これからも、現場で頑張っておられる方々を支援するために、表彰行事に力を注いでいくつもりです。
なお、当日の午前中、同じホールで11時から「参与会議」が開催され、東京農業大学の黒瀧秀久教授より、「網走西部・東部流域における林業振興と森林認証取得」と題する基調講演をいただきました。まとめのところで、先生は、「オホーツク産材のブランド化・付加価値化を実現するためには、①FSC・SGECの2つの森林認証、②地域おける品質の担保のダブルスタンダードの下で、川下で認証材を得るための仕組み作りが不可欠であること」を強調されました。当山林会も、このメーッセージを銘記して、認証材の生産・利用を介した川上と川下の連携に、微力ながら様々な形で貢献していきたいと考えております。
ここで、山林会を取り巻く状況を俯瞰してみますと、アベノミクスは高度経済成長の夢をもう一度と言わんばかりに成長戦略を打ち出しております。現在、日本社会はインフラ更新の時期を迎えているとは言え、10年の間に、かつての高度経済成長期のような経済成長を実現することは到底無理です。他方、林野庁は、国産材利用拡大(木材利用ポイント、固定価格買い取り制度、公共建築物への木材利用など)に一層力を入れており、これに呼応するように3学会(日本土木学会、日本森林学会、日本木材学会)も木材利用拡大策を提言しています。このような川下での木材需要拡大策が、「植える人がいない、金不足で再造林もできない」という山村状況の中で、果たして川上側の林業振興や山元への利益還元につながる力を持ちうるのか、「林業の振興を旗印に掲げている」当山林会としては大いに気になるところです。農業の世界では、道の駅や直販所を核に、市場の価格に頼らずに、自分たちの工夫で新たな価値を創出していこうとする「価値創造」活動が盛んになりつつあります。もちろん、林業の世界でも、オホーツク網走地域の林業・林産業や自伐林業の方々のように、地域の特徴を活かした価値創造型の林業を展開している例も多く見られます。そこで、当山林会としては 自分たちの価値を体現できる「価値・価格提案型の林業」のサポーターにどうしたらなれるか、皆さんのお知恵を拝借しながら、自己研鑽に努めて参りたいと考えております。
最後に御礼かたがた一言。このたびの総会において役員改選が行われ、小生が会長再任、田中潔、梶谷辰哉、田中惣次副会長がそれぞれ留任、茂田和彦常務が退任、代わって工藤正憲常務が新任されました。特に、茂田常務には、この6年間、公益社団法人への移行という大変難しい仕事を含めて、当会の経常事業(4つの公益事業)のバランスのとれた企画実施に大いなる指導力を発揮して頂きました。ここに、深甚の謝意を表します。末筆になりましたが、これからの2年間、この新体制の下で職員一丸となって開かれた山林会をめざして努力致しますので、ご支援のほどよろしくお願いします。
追伸:挿画は、小生が小学校6年生の時に模写した岩田専太郎のさし絵(獅子丸一平・川口松太郎文、毎日新聞連載)です。
2013年6月 箕輪 光博