2009年12月26日
大貫 仁人
(2日目)
宿を定刻に出発、2日目の視察地・千葉県山武市に向かう。山武林業の中心地にある農林総合研究センター森林研究所(平成20年改組←森林研究センター(平成13年)←林業試験場(昭和38年))へ、一路、関東自動車道路を引き返し、富里インターから国道409号線を南下し、八街市から東に入って、10時頃、到着。森林研究所所長の齊藤映夫さんはじめ研究所の皆さんが出迎えてくれました。そこから、山武林業(大径木生産現場)の視察地へ向かう。山武地域はほぼ平坦地形であるために平地林及び背戸山(うらやま)が多いのが特徴とのこと。視察現場も部落の中で交通量の多い大通りからチョット入った所の約4ha位の林分で、端道にそって位置していた。上層はサンブスギ(150年生以上)、下層はヒノキ(40年生)の二段林であった。上層のスギは100本/ha位残されていて注文に応じて単木伐採され販売しているとのこと。現在伐採されている現場に案内された。昨年も9本が伐採されたとのこと。材はつき板加工用に使われ、価格は30万円/m3位とか。伐採されたばかりの伐根をみると樹齢約210年で、根回り3m、樹高30mといった大きさであった。材は脂身のあるやさしい鮮やかな赤味を帯びていた。また、伐採された丸太の中にはサンブスギの難点である溝腐病の痕跡も見られた。しかし、病根は一部分であり他の部分は材として利用できるとのことであった。
この視察箇所から再び森林研究所に戻り、二階の大会議室で、齊藤所長さんから、森林研究所の概要や取り組んでいる研究課題等について説明を受けました。人工林管理、針葉樹の下層への広葉樹植栽、海岸防災林、癒しの小径、木材利用、松枯れ対策、キノコ害虫、杉非赤枯溝腐病、森林の獣害、高性能木炭、木質プラスチック、マテバシイのオガ粉利用、竹チップ等が研究活動のキーワドで、千葉県全域に試験地を配置し取り組んでいるとのことでした。ところで、研究所の敷地内にはサンブスギの展示林があり、その殆どが非赤枯溝腐病に感染していて、この病気の展示林の様相を呈していることには驚きました。また、大会議室の全側面に非赤枯溝腐病罹災木を作った腰板が使われていましたが綺麗なものでした。この非赤枯溝腐病は、植栽後20~30年生で地上2~3mのところに症状があらわれるため初期防除が難しいとのこと。火山灰土壌で発生が多く粘土質土壌では少ないそうです。
所長さんのお話の後、千葉県山武農林振興センターの横田正彦さんから「山武林業の歴史と現状」についてのお話を聞きました。発祥と歴史、山武林業の造林での特徴、サンブスギの特性、山武林業地帯、山武林業の地況、山武林業の現状等についてでした。非赤枯溝腐病の蔓延により林業への意欲喪失が大きな問題となっていて、そのため、溝腐病総合対策事業を県単独事業をしてはじめたそうで、罹病木の除去と森林再生に取り組んでいるとのことでした。
昼食の後、NPO法人さんむ環連協理事の高橋明美さんとその仲間が参じて下さった。「さんむ環連協」は、千葉県里山条例が制定された後に設立されたNPO法人(平成14年2月NPO認証)で、環境保全、環境啓発活動を目的としているそうです。高橋さんの説明によると、「さんむ環連協」の具体的な活動は、里山保全整備、環境監視パトロール(不法投棄の防止)、残土埋立・山砂採取阻止、自然学習、環境啓発等だそうです。このうちの「里山保全整備活用活動」では、千葉県里山条例に基づき山林所有者と里山協定を結び、里山の全伐、間伐、下刈り、植栽を実施しているそうで、対象山林は小学生等の自然学習の場としても利用させてもらっているとのことです。現在は25名の会員で土・日曜日に活動をしているそうで、里山提供者の募集に努力しているとのことでした。このようなお話しの後、実際の活動現場2カ所に案内して頂きました。最初は、平成16年に里山協定を結び、約1haの里山(実際には舗装道路際)にヤマザクラ、ヤマグリ、クヌギ、ナラ、ヤマボウシなど10種の落葉樹を1,600本植えた現場で、年3回の下刈りを行っているそうです。苗高15cm位の苗木を植えた現場は背丈3m位に成長していました。会の皆さんに見守られて立派な里山広葉樹林へ成長するものと思われました。2カ所目は、会員同士の親交と交流の場建設のためのツリーハウス建設現場です。67年生の民有林内の眺めの良い所にツリーハウスが建築中でした。写真に示すようになかなかの傑作でありこれからの楽しみを期待しながら、一同NPOの皆さんと別れて、二泊目の勝浦ホテル三日月へ向かいました。
(報告(5)につづく)
平成21年12月 大貫仁人