2020年9月1日
林業文献センターの林業遺産認定
2020年5月27日に開催された日本森林学会の定時総会において、2019年11月に当会が同学会の「林業遺産」2019年度案件に応募申請していた「大日本山林会 林業文献センターと収集資料群」が他の5件と合わせて認定されました。
日本森林学会の「林業遺産」選定事業
昭和初期に森林資源の充実が課題となるなか、当会を中心に全国的な緑化行事の催行が提唱され、1934(昭和9)年4月に初めて愛林日記念植樹が行われた筑波山麓の「全国緑化行事発祥の地」ほか9件が2013年に認定されたのを皮切りに、2018年度までの6年間に35件が認定されており、今回の6件を加え、総認定件数は41件となっています。
当センターの起源
当センターの起源は、1976(昭和51)年、王子製紙副社長の小林準一郎氏が森林・林業・林産業およびこれらの関連産業に関する学術書・書籍・文献資料が他の分野に比べて散逸する傾向が強いことを憂慮し、当時、林野庁職員であり後に当会の常務理事になる萩野敏雄氏に、私財を投げ打って古今内外のそうした文献を収集・分類・保管し、社会一般の利用に供する機関を設立したいとの強い思いを相談したことに端を発します。その後、東京教育大学教授の鈴木尚夫氏はじめ多くの方々のご尽力を得、また、林材ジャーナリストの宮原省久氏のご遺族から同氏の貴重な蔵書等約5千点の寄贈を受け、東京大学名誉教授の島田錦蔵氏を会長にいただき、文京区小石川の伝通院ビルに一室を借りて当センターを設立したのは、1977年6月のことでした。
その後、1981(昭和56)年、小林氏の私的機関から林政総合調査研究所の付属機関となるとともに1982年には手狭になっていた伝通院ビルから港区赤坂の三会堂ビルの地下に移転し、当会の負担の下で運営を継続してきましたが、当会は創立100周年の行事として名実ともに当センターを運営することを望んでおり、1986(昭和61)年6月1日、林政総研から寄付の形で当会に移管され、林業文献センターが発足しました。
当センターの収集資料群
当センターは、設立当初、前述の林材ジャーナリスト宮原省久氏を皮切りに、センターの設立者である王子製紙の小林準一郎氏、通産省職員の中西利英氏、三重高農の馬岡隆清氏、日本パルプの小林猛臣氏の所蔵資料の収集と続き、その後、山林局の業務課長を務めた早尾丑麿氏、同じ山林局職員である藤村重任氏、戦前、本多静六博士や徳川宗敬博士の私設秘書的な仕事をしていた増田荘一氏等の貴重な資料を蔵書に加えてきました。このほか、蝦夷日記等の古文書、明治時代の地券、国郡全図等の古地図、大日本行程大絵図等の絵図、林区署制度五十周年記念絵はがきなども収蔵しており、文献総数は、2020(令和2)年3月末現在、31,319点にのぼります。
当センターの選定理由
①原則として寄贈に依存する。
②なるべく古い文献に重点をおく。
③一次資料保存の重要性から図書のみではなく文書等の収集も並行する。
という方針で文献を収集してきており、国会図書館等にもない古い図書や政策形成の基となった貴重な資料を収蔵しています。
収書第1号となった宮原文庫約5千点は、木材・林政から建築・鉄・技術論まで幅広い内容であり、戦前期の貴重なパンフレット類が非常に多く、その対象は外地(樺太、朝鮮)や満州にまで及んでいます。また、1931(昭和6)年創刊の月刊誌である木材研究会(その後、日本木材研究所に名称変更)発行の『木材』がほぼ全巻揃っています。
収書第2号である小林文庫は、戦前の旧王子製紙関係の書類が多く、その対象も外地や中国にまで及んでおり、一次資料としての価値が極めて高いものと言えます。収書第3号の中西文庫は図書は少ないものの、昭和20~30年代の東南アジア関係の官庁書類、新聞など貴重な資料が揃っています。
そのほか、大正時代から戦後期までの官庁文書で最終文書のみならず作成途中の草案まで含まれており政策の形成過程を知ることができる早尾文庫、昭和初期から戦後期までの官庁資料である藤村文庫、江戸時代における秋田藩その他多くの藩の森林・林業に係る膨大な資料である増田文庫などが特筆されます。
また、これらの文献のうち3万点弱は「収蔵文献検索システム」に登録してホームページ上で公開しており、どなたでも検索できるとともに、当会が創立された1882(明治15)年から毎月欠かさず発行を続けている機関誌『山林』もホームページ上で公開しており、どなたでも読むことができます。加えて、宮原文庫の中の月刊誌『木材』も電子化を進めており、近々、ホームページ上で公開する予定です。
※林業文献センターのご利用につきましては、ホームページの「林業文献センター」をご覧ください。